要旨

  生体試料の微細高次構造解析の新しい手法として、様々な環境下で観察が可能である走査型プローブ顕微鏡が注目されている。 中でも、試料の形状像と光の像が観察することができる走査型光プローブ顕微鏡(SNOM/AFM)を使用して、オオムギ染色体の高次構造解析やDNAの高感度観察を試みた。
  オオムギ(Hordeum vulgare, cv. Minorimugi)より分離した染色体の高次構造解析を試みた。染色体全体をYOYO-1で蛍光染色したものおよびバンド処理をした ものを観察試料とした。また、YOYO-1で蛍光染色し、マイカ上に展開したDNAの高感度観察も合わせて行った。観察は、光ファイバープローブをAFMで制御したSNOM/AFM(SNOAM:セイコ ーインスツルメンツ(株)製)を使用し、励起光は488nmのArレーザーを用い、APD(avalanche photodiode)により蛍光を取得した。観察は大気中、室温で行った。
  SNOM/AFMによって、蛍光染色試料の表面形状と蛍光強度の同時観察が容易に可能になった。オオムギ染色体においては、表面形状(高さ)と蛍光強度の強弱が一致しないことが わかった。例えば、セントロメア付近は立体的に低いが、蛍光強度は強かった。また、バンド処理をした染色体の蛍光強度の強い部分が形状的に高い部分に 必ずしも相当しなかった。蛍光色素とDNAとの結合性など染色体の高次構造との間に何らかの関係があることを考慮する必要があるが、バンド処理により、ヘテロクロマチン部位の蛍光強度が 強いのではないかと考えられ、DNAが高度に凝集されている可能性が示唆された。また、DNAに関しては、これまで困難とされてきた光の波長以下の観察が可能となり、ナノスケールで の特定遺伝子マッピングの可視化の可能性が示された。


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緒言

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