緒言

  染色体は、DNAや多くの蛋白質を含んでおり、それらが、複雑に凝集し、いわゆる「染色体」の構造を形作っている。
  DNAファイバーの構造は、直径2nmの二重らせん構造を、ヒストンとDNAファイバーで、ヌクレオソーム、ソレノイドを形成し、クロマチンファイバーとなっている。しかしながら、 そこから、上(300から700nm)の高次構造は正確にはわかっていない。つまり、染色体の構造がわかっていないのである。この300から700nmは、遺伝子発現等の機能発現には欠かせな い構造的機能があるとされている。300から700nmの構造を把握するための有効な良い方法や技術がないため、染色体の高次構造構造がわからないのである。
  この範囲あたりの微細高次構造の新しい手法として、様々な環境下で観察が可能である走査型プローブ顕微鏡(SPM)が注目されている。中でも、試料の形状像と光の像が、同時に 観察することができる走査型光プローブ顕微鏡(SNOM/AFM)を利用して、これら暗闇の世界に光をあてることを試みた。
  SNOM/AFM(走査型近接場光プローブ原子間力顕微鏡)は、先端を鋭利にした光プローブを プローブにし、先端から近接場光を生じさせ、AFM制御しながら、試料の形状像と光の像を同時に観察する顕微鏡である(「方法」参照)。このSNOM/AFMを利用することにより、試料に 金属コート等をすることなく、ナマに近い状態で形状が把握でき、近接場光により光の波長以下の高分解能の観察が可能となる。両方のデータを合わせることにより、形状と光(本研 究では蛍光)の相関が確認でき、染色体の微細高次構造がわかるのではないかと期待できる。
  染色体の微細高次構造を検討するためには、光の分解能の検討が不可欠である。そのため、λ(ラムダ)DNAをモデル試料とし、光の分解能の把握を試みた。これは、現在、DNA配列 の解読が行われているが、将来的に、DNA上の遺伝子地図を直接観察することにより、nano-FISH法による遺伝子マッピングが可能となることも視野に入れている。
  本研究では、SNOM/AFMを用いて、染色体の高次構造把握と、λ(ラムダ)DNAをモデル試料とし、光の分解能の把握を試みた。




目的

  様々な前処理で、染色体の構造を変化させ、染色体の微細立体高次構造を把握する。
  形状像と蛍光像との比較を行い、光の波長以下での高分解能解析を行う。


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実験方法
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