第4回 MICS総会・年会(講演会)報告

 去る 9月 10日 (水)、東京弥生会館において第4回MICS総会・年会(講演会)が開催されました。厳しい残暑の中、45名の参加がありました。
  総会では、中尾会長の挨拶に続き、平成13年度平成13年度(平成13年9月1日〜平成14年7月31日の活動報告および決算報告がなされ、承認されました。
          → 活動報告     → 決算報告
 続いて、平成14年度(平成14年8月1日〜平成15年6月30日)の活動計画および予算案が提案され、承認されました。
          → 平成14年度活動計画    → 平成14年度予算案

 短い休憩を挟み、13:20から講演会が行われました。

 最初に 種谷氏(種谷技術士事務所)から、『食品の微細物理構造と加工特性』について、「物理的に混合の系は界面エネルギーの増加を伴うことになり、安定な系にするには第3の物質が必要」、という安定化理論をふまえて、(1)乳およびその製品(加工法も含めて)の乳化現象、凝集現象について、(2)高脂肪製品と界面についてO/W、W/O系のタンパク質吸着の理論の説明とその安定性について、(3)気相分散精製品と界面として、G/W、W/Gの系での気相、泡沫の特性と安定性について、の3部構成でご講演をいただきました。


 次に、西村氏(日立サイエンスシステムズ鞄゚珂カスタマーセンター)が「低真空SEMによる含水試料の観察」について講演されました。低真空SEMには、(1)帯電現象による像傷害を大幅に削減でき、非導電性試料でも金属コーティング無しで観察/分析が可能、(2)試料質を低温とすることで含水資料の乾燥に伴う変形を防ぐことができるため、前処理を省略して水や油を含んだ試料の迅速な観察が可能である、との2つの特徴が説明され、生物等の含水試料の観察には不可欠であった「固定→脱水→乾燥→金属コーティング」の操作を省略し、試料を直接資料室に入れて観察した多くの応用例が紹介されました。さらにカラーSEM 法を用いた食品の成分分析についても紹介されました。低真空SEMの今後の利用範囲の拡大と可能性が期待されます。

 続いて杉山純一氏((独)食品総合研究所)が「食品のマイクロスライシングと微細構造の3次元可視化」について講演されました。超精密自動ミクロトームによる連続切片の作成、さらにそれらを粘着テープ上に回収して連続画像を取込む技術についての説明がありました。次に取り込んだ連続画像を染色や分光・蛍光によって可視化した画像をデジタルイメージとし、それらを再構築して立体化することで、精細な3次元構造が得られ形態構造の可視化が可能なほか、機能因子の可視化も可能となること、さらにそれらの技術の実例としてメロンの糖度分布や米の主要成分の立体分布などが紹介されました。

 最後に、宮下和夫氏(北海道大学・大学院・水産科学研究科)が「 脂質の微細構造と抗酸化機能」について講演されました。酸化安定性の低いDHAやEPAは生体組織内で安定が高い理由には生体内の水の存在が大きく関わっているとし、水溶液中での酸化について説明されました。水溶液中での不飽和脂肪酸はエマルションの形成により酸化の進行が抑制される現象が見られるが実際の食品系では様々な酸化因子によりかえって酸化作用を受けやすい構造でもあること、酸化因子の作用を受けにくく界面をコントロールしたエマルションを形成することで酸化安定性を高める可能性があること、その方法としては界面の性質をコントロールするためのタンパク質を乳化剤としたエマルションの形成などがあることが紹介されました。

種谷氏のご講演 

西村氏のご講演
 
杉山氏のご講演   


宮下氏のご講演
 続いて行われた懇親会は種谷講師の乾杯で始まりました。

種谷講師による乾杯

優秀賞・アート賞のの表彰
(写真は優秀賞)
 懇親会では去る5月26日から6月13日まで行われた第3回研究発表会での投票結果に基づき決定された、優秀賞、アート賞の表彰も行われました。受賞者は以下の通りです。

優秀賞

 「o/w系エマルション系での高度不飽和トリアシルグリセロールの酸化安定性に及ぼす乳化剤と粒子径の影響」
   木村菜穂子、原貴幸、齋藤由香里、宮下和夫(北海道大学大学院)、
城戸浩胤(三菱化学梶j、松田孝二(三菱化学フーズ梶j

アート賞

「細菌運動のマジック・抵抗が大きいほど速く泳げる理由」 
曲山幸生(独立行政法人 食品総合研究所)


 「生物資料の液中AFMの試み」 
            吉野智之、金原浩子、杉山滋、大谷敏郎 (独立行政法人 食品総合研究所

懇親会風景

回(第5回総会・年会(講演会))は2004年8月2日 東京にて開催予定です。多くの皆様の参加をお待ちしています。

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