MICS NEWS Vol.16 Number 2

          5.生体機能 … 機能の発見、製品開発 etc.
             

”B−038.岡山県生物科学研究所は、ビール酵母など酵母菌の細胞壁を使って植物の免疫力を高める手法を開発。酵母の細胞壁と病原菌の成分が似ているため、植物が“勘違い”し、免疫力を強め、病気にかかりにくくなるという。通常の殺菌剤とは異なり耐性菌が現れにくいとされ、「環境に優しい次世代の病害防除資材」(同研究所)として期待がかかる。 
【日本農業新聞 2015.5.20朝刊 14面】“


”B−039.住友林業は、大宰府に左遷された菅原道真公を慕い、京都から九州に一晩で飛来した「飛梅伝説」伝承の木とされる北野天満宮の御神木である紅梅のクローン苗木作製に成功。北野天満宮は培養した苗木を「平成の飛梅」として大宰府など全国の天満宮に贈ることも検討しているという。同社は枝から採取した組織を培養、「多芽体」と呼ばれる芽の塊を作成。梅の組織培養による苗木生産の実用化は世界初となる。 
【西日本新聞 2015.5.20朝刊 29面】“


”B−041.国立極地研究所の渡辺佑基助教(海洋生物学)らの研究チームは、マグロや一部のサメなど体温が水温より高い魚は、その他の魚より早く泳げることが判明したと発表。チームは46種類の魚の泳ぐ速度を比較し、一般的に体重が重いほど泳ぐ速く泳ぐため、体重を同じと仮定すると、体温が高い魚はその魚より2.7倍も速いとの結果になったという。渡辺助教は「体温を高く保って筋肉の働きを高めていると考えられる」と話す。 
【読売新聞 2015.5.21夕刊 9面】“


”B−043.カナダ国立研究開発機構、カナダ農務・農産食品省などは共同で、コムギの体表的な病害「赤かび病」への抵抗性に関わる新知見を得た。カナダ放射線施設CLSで実験を行い小穂などの構造を解析し、抵抗性のある品種と感染しやすい品種を比較し、構成する細胞壁の成分の違いなどを発見。耐性を示す重要な形質の迅速なスクリーニング法の基盤技術として研究を進め栽培に適した耐性品種開発への応用を目指すという。
  【化学工業日報 2015.5.22朝刊 6面】“


”C−002.京都大iPS細胞研究所は、人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)で作った細胞集団の中から、心筋や肝臓など特定の細胞だけを正確に選別して取り出すことに成功したと、21日付けのセル電子版に発表。細胞の種類によって異なる「マイクロRNA」という物質を目印に選別する新手法で、ゲノムを傷つけずがん化のリスクを抑えられる為、細胞を移植して臓器を修復するなどの再生医療の安全性向上に役立つ。(ES細胞でも可能) 
【山口新聞 2015.5.22朝刊 22面】“


”C−003.慶応義塾大学先端生命科学研究所は、50個を超えるDNA断片を1回の操作だけで指定通りの向きや順番に連結できる遺伝子組み換え技術を開発。プラスミドDNAの調整法の構築を容易にする方法を見いだし、4万8,500塩基対ほどの長い鎖DNAの作成が可能となった。遺伝子集積法として多数の遺伝子を一括して細胞内へ導入する技術の確立に向け有用成分の効率的な生産や菌体への機能付加などに弾みがつく。 
【化学工業日報 2015.5.25朝刊 7面】
【日刊工業新聞 2015.5.26朝刊 25面】“


”C−006.京都大学は、水中の藻類が二酸化炭素(CO2)を取り込む仕組みを解明したと発表。2種類の膜たんぱく質が、水中のイオン化したCO2を細胞内の葉緑体の中まで運ぶと判明した。これらのたんぱく質をつくる遺伝子をイネやコムギに導入すれば、収穫量を増やせる可能性があるという。研究成果は26日、米科学アカデミー紀要(電子版)に掲載。 
【日経産業新聞 2015.5.26朝刊 8面】“


”C−007.東京大学は、タマネギなど農産物に含まれる成分のケルセチンの脂質代謝改善効果に関わる新たな分子機構の解明に成功。同成分を取り込むと、小腸からの脂質吸収に重要な役割を担うアポリポたん白質B(アポB)と呼ばれるたん白質の遺伝子の発現活性を抑制することが判明。肥満や生活習慣病の予防に向けて、ケルセチンの有用性を示す可能性が見出された。
  【化学工業日報 2015.5.26朝刊 4面】“


”C−029.東京理科大学は、放射線によって傷害を受けた植物の細胞内で、ペアになっている染色体同士が接近することを発見。損傷したDNAを修復する動きと示唆され、放射線に対する植物の応答反応の一端を明らかにした成果で、放射線傷害に強い植物の作出への貢献が期待されている。また、染色体構造を制御するたんぱく質「RAD54」が放射線傷害に対応する機構に関与していると示唆されているという。 
【日刊工業新聞 2015.6.8朝刊 19面】“


”C−030.熊本大学の生命資源研究・支援センターは、実験用マウスで1匹のメスから100個以上の卵子を得ることに成功。排卵調節をするインヒビンの抗体と、排卵刺激のホルモンを組み合わせ、従来の過剰排卵誘発法の4、5倍の卵子を得たという。卵子採取で使うメスのマウスの数を抑制でき、研究の効率化にも役立つと期待されており、実験動物の販売を手掛ける企業が新規排卵誘発剤として7月に発売を予定している。 
【日刊工業新聞 2015.6.8朝刊 19面】“


”C−036.自然科学研究機構基礎生物学研究所は、生殖細胞が精子になるか卵になるかを決める遺伝子を、脊椎動物で初めてメダカで突き止めた。研究成果は米科学誌「サイエンス」電子版に掲載。研究グループはメダカの生殖細胞の遺伝子を調査し、「fox13」と呼ばれる遺伝子がメスでは働き、オスでは抑えられていることが判明。メスでこの遺伝子が働かないようにしたところ、卵巣内で卵と同時に精子が作られ受精可能だった。 
【読売新聞 2015.6.12朝刊 35面】
【茨城新聞 2015.6.12朝刊 21面】“


”C−041.東京農業大学とサカタのタネ、農業生物資源研究所、三菱スペース・ソフトウエア、農業環境技術研究所の共同研究グループは、ダイコンが太ることに関わる遺伝子の全貌を解明。実用品種のゲノムを解読し遺伝子を調べ、根が太り出すタイミングや肥大を促す細胞分裂組織で働く遺伝子などを同定したという。新品種開発に有用な情報の提供が可能となり、在来品種の遺伝子資源の活用などに期待されている。
【化学工業日報 2015.6.15朝刊 4面】
【農業共済新聞 2015.6.17朝刊 9面】“


”C−042.東京大学は、光合成生物である藍藻が生物にとって危険な光を感知し、防御する仕組みを解明。可視光とその周辺領域の色の光を感知するたんぱく質「シアノバクテリオクロム」に着目し、複数の同たんぱく質が互いに協調することで、可視光の中でも比較的短波長で有害な可能性がある青色光に対し、細胞凝集して光を遮ることで藍藻の生存率を上げている可能性を示した。 
【日刊工業新聞 2015.6.16朝刊 28面】“


”C−044.東京大学は、生物の遺伝子を切り貼りする「ゲノム編集」を光でオンオフする技術を開発。従来は酵素の作用を止めることができず、改変したい部分以外の配列を変えてしまう恐れがあったが、今回の技術を使えば、より正確な遺伝子編集ができる可能性がある。成果は16日に、米科学誌「ネイチャーバイオテクノロジー」に発表。 
【日経産業新聞 2015.6.16朝刊 8面】
【日刊工業新聞 2015.6.17朝刊 17面】
【読売新聞 2015.6.20夕刊 12面】
【読売新聞(大阪) 2015.6.21朝刊 31面】“


”C−046.岡山県生物科学研究所は、植物の免疫力を高め生育を促進する効果を持つ、新たな化合物を発見したと発表。免疫力を高める物質はプラントアクティベーター(病害抵抗性誘導物質)と呼ばれ、殺菌剤と違い耐性菌が現れにくいという。環境への負荷が少ない農薬開発へつながると期待が高まる。
  【日本農業新聞 2015.6.17朝刊 18面】
【日刊工業新聞 2015.6.19朝刊 27面】“


”C−050.筑波大学などの研究チームは、植物ホルモンに関する機能を制御して、受粉していないトマトを結実させることに成功。この技術を応用すれば人工授粉を省いて生産を効率化でき、トマトの増産や価格安定につながる。トマトの雌しべから放出されるガス状の植物ホルモン「エチレン」に注目し、放出量を測定。受粉前は大量に出ていたが、受粉後は急激に減少。エチレンが結実を抑えていると見込み、未受粉のトマトの雌しべを化学処理し、エチレンの感受性を低下させたところ結実した。 
【毎日新聞 2015.6.20夕刊 7面】“


”C−051.名古屋大学は、長く謎とされてきた一部のキノコが緑色に光る仕組みについて、原因物質を特定。多くのキノコに含まれる「ヒスピジン」と、光るキノコのみが持つ酵素が反応することで、発光することを確認した。ロシアの研究チームも同様の研究をしており、研究成果は共同で独化学誌「アンゲバンテ・ケミー」(電子版)に掲載。 
【東京新聞 2015.6.22朝刊 27面】







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