MICS NEWS Vol.16 Number 4

          5.生体機能 … 機能の発見、製品開発 etc.
             

”E−026.名古屋大学などの研究チームは、線虫の行動を解析する手法を開発し、サツマイモネコブセンチュウが、硝酸カリウムの濃度差が大きい場所を嫌い、一定の濃度差の場所を好むことを発見したと発表。環境をコントロールすることで線虫の行動を制御し、新しい防除法の開発が可能になった。この成果は、オランダの科学雑誌「Sensors & Actucators B:Cheical」のオンライン版で公開された。 
【日本農業新聞 2015.8.5朝刊 14面】“


”E−040.富山県立大学生物工学研究センターは、節足動物(多足類)のヤンバルトサカヤスデから高活性のヒドロキシニトリルリアーゼ(HNL)を発見。医薬品、農薬などの原料や中間体となるシアノヒドリン化合物の合成に用いられる酵素で、工業的に使われているアーモンド由来のHNLに比べ活性は約5倍、高温や幅広いpH域で安定的に機能するという。既に酵母などを使った酵母生産にも成功しており、今後実用化に向け酵素の生産性を向上や、これと並行して高活性メカニズムの解明に取り組む。
  【化学工業日報 2015.8.11朝刊 5面】
【北日本新聞 2015.8.11朝刊 31面】
【日刊工業新聞 2015.8.12朝刊 19面】
【日本経済新聞 2015.8.13夕刊 12面】
【日経産業新聞 2015.8.14朝刊 6面】“


”E−045.沖縄科学技術大学院大学、米シカゴ大学、米カリフォルニア大学バーグレー校の研究グループは、タコの全遺伝子(ゲノム)の解読に成功。タコはイカやオウムガイなどを含む「頭足類」の仲間で、頭足類のゲノム解読は初。頭足類の理解が深まることで生物進化の研究の進展などにつながる可能性があるという。成果は、英科学誌ネイチャーに掲載。 
【日刊工業新聞 2015.8.13朝刊 15面】
【化学工業日報 2015.8.13朝刊 1面】
【東京新聞 2015.8.13夕刊 8面】“


”E−051.岡山大学資源植物科学研究所と農業環境技術研究所の共同グループは、イネがモミ殻にケイ素(主に非結晶性含水のケイ素)を優先的に分配する仕組みを突き止めた。ケイ素はシリカとして葉の表面などに蓄積し、高温や病原菌から保護する働きを持っている。今回の成果を応用し、ミネラル元素を選択的に制御できれば、穀粒に栄養成分を高含有するコメの開発につながるという。成果は米科学アカデミー紀要電子版に掲載。 
【化学工業日報 2015.8.19朝刊 5面】“


”E−054.京都大学は、農業・食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所と共同で、体を構成するあらゆる臓器や組織に育つ高品質のiPS細胞をウシで作製することに成功したと発表。ウシではこれまで、様々な臓器や組織に育つ細胞は作ることができなかった。家畜の繁殖効率の向上や希少動物の保護などに役立つとしている。研究成果は20日、米科学誌プロスワン(電子版)に掲載された。
  【日本経済新聞 2015.8.20朝刊 38面】
  【日本産業新聞 2015.8.20朝刊 8面】“


”E−056.筑波大学と高輝度光科学研究センターは、昆虫が噛んだり吸ったりするのに特殊化した多様な口を持つようになった進化のナゾを解く新説を発表。口を構成するいくつかの「部品」が構造的に連関して動く祖先型から進化したとする説で、部品が相互の連関なしに別々に動く単純な構造から多様化したという従来の説を転覆した。今後、過去の地球環境に関する研究と統合することで、昆虫類の進化に関するより詳しい理解が進むと期待。 
【常陽新聞 2015.8.21朝刊 14面】“


”E−059.農業環境技術研究所は、日本の外来昆虫のリストを北米やハワイの外来昆虫リストと比較し、日本の外来昆虫相の特徴を明白にした。ゴキブリ目、ノミ目のような衛生害虫や、アザミウマ目、カメムシ目など小型の栽培施設に発生する害虫が外来昆虫となりやすい傾向にあることを突き止めたという。研究チームはニュージーランドや欧州各国の研究者と協力し、より広域の害虫相比較を準備中で、分布が世界に拡大している害虫特徴を明らかにすることを目指している。 
【化学工業日報 2015.8.25朝刊 5面】


”E−062.沖縄農林水産部は、葉にとげがないパイナップルのDNA配列を明らかにし、種をまいてから1カ月で判別できる技術を開発したと発表。とげの有無は発芽後6〜10カ月後、目視や触診でしか分からなかったが、今回の判別技術は約1カ月後に葉の一部を切り取りDNAシーケンサーでとげなし特有の配列を分析。判別までの時間が大幅に短縮され、育苗・選抜のコストが低減でき、効率的な品種改良につながるという。 
【沖縄タイムス 2015.8.26朝刊 9面】
【琉球新報 2015.8.27朝刊 5面】“


”E−066.筑波大学は、高糖度で単為結果性を持つトマト系統を作出し、その遺伝子を同定したと発表。ミニトマト「マイクロトム」1万6000系統の中から選抜。慣行通り栽培しても糖度は10と、高糖度トマトの目安となる8を超えるという。この系統を活用することで、植物ホルモンの処理や蜂による受粉が要らず、慣行通りに作っても糖度が高い品種を育成できる。 
【日本農業新聞 2015.8.27朝刊 1面】“


”E−067.東京工業大学は、バイオ燃料となる油脂を葉に多く蓄積する植物を開発。油脂分が多い種子ができる前に刈り取ってもバイオ燃料を確保できる利点があり、収穫に必要な期間を短縮することが期待できる。今回は屋外での栽培に規制がかかる遺伝子組み換え技術を使用しているが、規制外のゲノム編集の手法を適用すれば実用化には問題ないとみている。 
【日経産業新聞 2015.8.27朝刊 8面】“


”E−069.名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所は、ストライガが寄生する過程を可視化できる分子「ヨシムラクトン」を設計・合成し、寄生植物ストライガの発芽を誘導するタンパク質を発見。ストライガは、穀物の根に寄生し養分を吸い取る有害な植物であり、「魔女の雑草」と呼ばれ、ストライガによる農業被害は、年間1兆円を上回り、アフリカの食糧問題の主たる要因となっているという。 今回の発見により、ストライガの発芽を制御する薬剤の開発に応用することが可能で、将来的には食糧問題解決の糸口として期待がされる。 本研究成果は、アメリカ科学誌「サイエンス」のオンライン版に8月21日掲載。
【科学新聞 2015.8.28朝刊 1面】“


”E−074.明治大学と理化学研究所は共同で、ラン藻の遺伝子を改変し、代謝を変動させることに成功。遺伝子改変したラン藻を暗闇で培養すると有用物質であるアミノ酸が通常の2-4倍多く生成されたという。ラン藻は光合成による有用物質生産が期待されており、その実用化への貢献が期待されている。 
【日刊工業新聞 2015.8.31朝刊 19面】“


”F−007.東京大学と米マサチューセッツ工科大学(MIT)と共同で、遺伝子を目的の場所で効率良く改変する「ゲノム編集」技術に使用できる小型の新しいたんぱく質の詳しい構造を突き止めた。標的遺伝子の働きを活性化したり抑えたりするのに役立ち、ゲノム編集技術の効率化につながるとみている。成果は米科学誌セル(電子版)に掲載。 
【日経産業新聞 2015.8.31朝刊 9面】“


”F−013.産業技術総合研究所と北海道大学などは、農作物の害虫であるカメムシが餌とともに取り込んだ多くの細菌の中から自分に必要な共生細菌だけを選別する仕組みを解明。消化管の途中で狭い通り道を共生細菌だけが通り抜け、共生器官に到達することを明らかにしたという。放送大学、農業環境技術研究所、韓国・釜山大学校との共同研究で、成果は1日、米国科学アカデミー紀要電子版に掲載。 
【日刊工業新聞 2015.9.2朝刊 23面】
【日経産業新聞 2015.9.7朝刊 8面】“


”F−016.奈良先端科学技術大学院大学は、植物が近親交配を防ぐ詳しい仕組みを解明。品質がそろった農作物を作る品種改良へ応用できる可能性がある。研究成果は英科学誌ネイチャープランツに掲載。
  【日経産業新聞 2015.9.3朝刊 8面】“


”F−021.理化学研究所は、自然免疫の記憶メカニズムを解明。病原体の感染により遺伝子の化学的修飾による変化であるエピゲノムが変化、その状態が持続することにより再感染への抵抗性が上昇していたという。1度侵入した病原体をリンパ球が記憶して排除する獲得免疫だけでなく、自然免疫にも記憶が存在することが示唆されていたが、そのメカニズムは不明であった。アレルギー発症メカニズムの解明や、より効果の高いワクチン開発などに繋がる事が期待されている。
  【化学工業日報 2015.9.3朝刊 5面】“


”F−025.東京海洋大学は、九州の有明海に生息するアサリの一部が、中国から持ち込まれた近縁の外来種と交雑し、両方の遺伝子を備えた雑種になった恐れがあることを調査で判明。東海大の北田教授は、有明海を中心に、分布がさらに拡大する懸念があり、現在の生息範囲を確認したうえで、別の海域から在来種を移植するなどの対策を講じるべきと話す。研究成果は生物保全の専門誌に掲載。 
【日本経済新聞 2015.9.7夕刊 12面】“


”F−030.信州大学は、長野県に生息するざざむし(ヒゲナガカワトビケラの幼虫)から新規のシルクたんぱく質遺伝子を発見し、その解析に成功。水中での接着性や川の流れにも負けない強度があり、カイコとは異なる特性のシルクができるという。バイオファイバー素材に有望として遺伝子組み換え技術による生産方法で、手術用の止血材など医療や工業分野への応用を目指している。
  【化学工業日報 2015.9.8朝刊 4面】“


”F−031.東京工業大学は、藻類の油脂蓄積量を大幅に増やす手法を開発。海産性の油脂高生産藻類ナンノクロロプシスに緑藻クラミドモナスの遺伝子制御領域などを導入することで実現。有用な脂肪酸を含む油脂の大量生産につながると期待される。ナンノクロロプシスが窒素が欠乏した条件に比べてリンが欠乏した条件で生育を維持しつつ、油脂を多く蓄積することを発見。リン欠乏時には糖脂質を合成し、糖脂質がリンの役割を担いながら生育を維持することを見出した。
【日刊工業新聞 2015.9.8朝刊 23面】
【化学工業日報 2015.9.10朝刊 3面】“


”F−032.東京工業大学は、微細藻類が油脂を作る際、窒素などの栄養源を感知するたんぱく質「TOR」がスイッチ機能を持つことを発見。TORの活性を阻害すると、油脂が合成されること見いだした。微細藻類を使ったバイオ燃料生産の実用化に向けた基盤技術になると期待されている。
  【日刊工業新聞 2015.9.9朝刊 23面】
【化学工業日報 2015.9.10朝刊 3面】“


”F−037.農業生物資源研究所と富山県農林水産総合技術センターは、黒い色をした古代米・紫黒米の中から、米を黒くしている遺伝子を特定したと発表。特定した遺伝子を既存の品種にうまく導入すれば、食味や栽培特性はそのままに、米粒を黒くすることも可能という。色素の抗酸化物質を多く含んだ、機能性を備えた米の育種が容易になるとしている。 
【日本農業新聞 2015.9.15朝刊 14面】
【日経産業新聞 2015.9.17朝刊 8面】


”F−038.芝浦工業大学は、軟体生物アメフラシの脳神経の伝達活動を可視化することに成功。脳神経の伝達速度を遅くすることで、正確な動きを捕捉した。この伝達活動を解析し、脳内の神経伝達による認識と学習のメカニズムを解明すれば、人の味覚障害や神経系疾患の原因究明と治療法確立に応用できるという。
【日刊工業新聞 2015.9.15朝刊 23面】“


”F−045.名古屋大学は、病原菌が感染した際、植物が活性酸素の生成を誘導させる防御のための分子メカニズムを突き止めた。活性酸素が免疫応答誘導のシグナルとなっているなど、植物免疫の仕組みが判明。病害防除技術として免疫付与剤など新しい農業資材の開発が考えられるという。成果は16日、米植物科学雑誌「The Plant Cell」に掲載された。 
【化学工業日報 2015.9.18朝刊 5面】“


”F−053.農研機構北海道農業研究センターは、北海道で江戸時代前期に栽培が始まった、通称「赤毛」と呼ばれる水稲は、二つの遺伝子の機能が壊れたことで極早生化し、寒い北海道でも栽培できるようになったことを調査で解明した。本来は熱帯作物とされる稲が北海道にたどり着いた経緯を解明し、寒冷地でも安定生産できる稲の品種開発につなげるという。
  【日本農業新聞 2015.9.25朝刊 14面】“


”F−058.理化学研究所と東京大学は、電気をエネルギー源として直接利用し栄養分を合成する微生物を確認したとスイスの科学誌で発表。太陽光を使う植物の「光合成」、メタンなど化学物質を利用する細菌の「化学合成」に加え、生物の第3のエネルギー利用法が見つかったことになり、理化学研究所の中村龍平チームリーダーは、「新たな生物圏が存在する可能性を示すものだ」と話している。 
【読売新聞 2015.9.26朝刊 37面】“







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